
細野・関研究室
HSLab.細野研究室は日本大学理工学部電気工学科、短期大学部、理工学部電子情報工学科での活動を経て、2013年の理工学部応用情報工学科の設立と同時に、応用情報工学科の研究室として活動しています。
そして関研究室が応用情報工学科の研究室として2021年に発足して以来、細野・関研究室として活動しています。
私たちは、AIや機械学習、数理モデリング、シミュレーションといった計算的アプローチを駆使し、情報通信・物理現象・医療など多様な実世界のシステムを理解・解釈し、応用するための研究を行っています。
- 情報通信工学に関する研究
- 波動・振動の解析法及びソフト開発に関する研究
- 波動・振動の数値シミュレーションに関する研究
- 音響信号処理に関する研究
- 画像処理・画像認識に関する研究
- 薬物動態解析ソフトの開発に関する研究
- 医学・薬学分野への人工知能応用に関する研究
- 責任あるAIに関する研究
音声分野
聴覚は、空気中を伝播する音波を耳が受け取り、それを脳が処理することで意味として理解する知覚プロセスです。そして人間の音声は、呼吸器系、発声器系、調音器系の協調的な運動によって生まれる複雑な信号であり、私たちの社会的活動において重要なコミュニケーション手段です。
私たちの研究室では、このような音と人間の知覚の関係に根ざした音声信号処理に関する人工知能研究を行っています。具体的には、音声の生成、認識、変換、合成などの技術を対象とし、音声コミュニケーションの高度化を目指しています。
環境ノイズに強い聴取支援技術として、骨導マイクロホンに着目した研究を行っています。骨導音は、頭蓋骨を伝って内耳に届く信号であり、気導音に比べて周囲の雑音の影響を受けにくいため、産業用・医療用の音声インタフェースとして大きな可能性を秘めています。私たちは、骨導音声と気導音声のスタイル変換や、それらを統合的に扱う音声認識の開発を通じて、頑健で柔軟な音声処理を実現しようとしています。
また、聴覚障害者支援を見据え、日常生活における生活音の自動識別や、音源定位による空間的状況認識など、生活の質(QoL)の向上に資する研究にも取り組んでいます。
画像分野
視覚は、外界の光を目を通して受け取り、それを脳が処置することで意味として理解する知覚プロセスです。私たちが世界を理解し、行動を選び、他者と関係を築くための、もっとも強力で本質的な知覚手段の一つです。
私たちの研究室では、この「見ること」の本質を見つめ直しながら、画像認識技術を核とした人工知能の研究開発に取り組んでいます。特に、ディープラーニングを中心としたAI技術を用い、物体検出・画像分類・顔認識・異常検出などの課題に対して、高精度かつ実用的なソリューションを追求しています。
私たちの目指すゴールは「性能の高さ」だけではありません。AIが出した判断に対して、「なぜそのように認識したのか」を人間が理解・納得できること、すなわちAIの説明可能性(Explainability)こそが、社会実装の鍵であると考えています。そのため、ディープラーニングモデルの判断根拠を可視化・解釈する手法の開発にも注力しており、医療や福祉、セキュリティなどの現場で安心して使えるAIを目指しています。
薬学分野
私たちの研究室では、情報科学・情報工学や人工知能に関するわれわれの知と薬学分野の専門家の知を組み合わせることで新たな研究の地平を拓こうとしています。本分野の研究は、日本大学薬学部の臨床薬物動態研究室とコラボレーションしています。
たとえば、医薬品開発や臨床現場における薬物治療では、個別の患者に対し安全にかつ十分な薬効を実現するために至適投与設計を行う必要があります。このためには、体内における経時的な薬の動き、薬物動態(pharmacokinetics, PK)を解析したうえでの、経時的な血中薬物濃度の推移予測が重要です。われわれは血中薬物濃度のような実数値を時系列予測するために、既知の数理モデル(PKモデル)とニューラルネットワークを組み合わせて血中薬物濃度を予測する新しいモデル(ANN-PKモデル)を開発しました。
また、私たちはこれらの予測モデルの透明性と説明可能性(Explainability)にも強くこだわります。AIが提示する数値やグラフが、医療従事者や薬剤師にとって「納得可能な説明」として機能するよう、視覚的可視化など、表現の工夫を重ねています。
さらに、生成モデルの技術を活用した合成データに基づく仮想患者を用いた研究にも応用を広げています。
医学分野
私たちの研究室では、人とAIが協調する新しい医療のかたちを模索しながら、さまざまな医療データを活用した共同研究に取り組んでいます。本分野の研究は、日本大学医学部や、他大学とコラボレーションしています。
現在は、日本大学病院と共同で、乳房MRIを活用した乳がん治療(乳房温存術)の高度化に取り組んでいます。また、日本大学医学部附属板橋病院の呼吸器内科と共同研究で、生活習慣や生理指標、検査データに基づく睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスク推定を行っており、潜在患者の早期スクリーニングに資するAI技術の開発を進めています。
このように、電子カルテ・検査データ・医療画像などの臨床情報を対象に、疾患リスクの予測モデルの構築、診断・重症度判定の自動化、病態進行の可視化・構造化などを推進しています。